「解毒剤」

祈はパソコンの画面を開き直し、メールを新規作成した。宛先:望月沙月。件名:海風台解体前の構造安全再調査に関する提案。

キーボードの上で指が三秒止まった。それから打ち始めた。

文面は冷静で専門的だった。感情の色は一切ない。すべての言葉が白河側の利益のために書かれていた。神宮地産には触れていない。父のことも。私的な動機のかけらも。

送信した。

翌朝、事務所の朝礼。

望月はプロジェクターの前に立ち、短い髪を耳の後ろに収めて、手のタブレット画面を全員に向けた。

「白河地産から、横浜港区域内の会員制プライベートクラブの設計委託が追加されました」声は高くないが、会議室の話し声が瞬時に消えた。

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