「最後の壁」

朔は頭を下げ、唇を祈の耳の横に近づけた。声は低く、彼女にしか聞き取れない笑みを帯びていた。

「たぶん——人が変わったんだと答えた」

祈の耳の付け根が瞬時に熱くなった。朔の肩を力いっぱい押しても、彼はびくともせず、むしろ引き寄せる腕に少し力を込めた。

「今日は機嫌がいいな」と朔が見下ろして、声に緩んだ笑みが滲んだ。

「白河クラブのプロジェクトで主任設計士に指名されました」祈の目が輝いていた。「白河側が私の再調査提案を見て、自分たちから要請してきたんです」

朔の眼差しが柔らかくなった。左手が後頸をとらえ、拇指が耳の後ろの皮膚を擦りながら、顔を傾けて口づけた。祈の手が彼の胸に当たり、掌の下...

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