第二十四章 玄関処の距離

早朝の世田谷本邸は薄霧に包まれていた。

紗奈は門の前に立ち、足取り変わらず霧の中へ歩み入った。

二階廊下の窓辺で、蓮はその次第に霞む後ろ姿を見つめ、喉の奥に名状しがたい衝動が湧き上がった。

「紗奈。」

声は寝起きの呟きに似ていた。

紗奈の足が一秒にも満たない間止まった。

振り返らなかった。


陽がまだ低い頃、国立感染症研究所の実験室にはすでに灯りが点いていた。

紗奈は白衣に着替え、実験台の前に腰を下ろした。

第一段階のワクチンは特例承認を経て量産ラインに乗ったが、X-24ウイルスの変異の兆しはデータの中に依然として浮かんでいる。次段階の広域抗体研究を直ちに進めねばなら...

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