第四十章 遊園地にて――「子どもたちは?」

鎌倉別邸の廊縁に、朝陽がよく差し込んでいた。

千代ばあ様がそこに座っている。白髪が光に照らされて際立ち、手の甲には静脈針の痕がまだ薄く残っていた。彼女は顔を上げ、紗奈を見つめる。声は柔らかい。「手術の後、子どもたちの笑顔が見たくてね。二人で付き添ってくれるなら、安心だよ。」

紗奈の視線がその手の甲に落ちる。一秒。

喉まで出かかった言葉を飲み込み、小さく答えた。「分かりました。」

奥の部屋から衣擦れの音。一条様が着替えて出てくる——深い藏青色のスポーツジャケット。スーツではない。財閥総帥特有の圧を削ぎ落とし、普通の父親の輪郭を纏っている。紗奈の目がその姿に一瞬留まり、すぐに逸れた。

心...

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