第六十七章 後悔など、あるはずがない

黒瀬さんは病院を出た後、すぐには車を出さなかった。

地下駐車場の暗がりに車を停め、エンジンを切った。換気管の低い唸りだけが聞こえた。スマートフォンの画面を明るくし、あの動画を最初から見直した。

短い映像だった。陽の小さな手が白衣の襟口を掴み、幼い声でその一言を言った——紗奈は迷わず、そのまま陽を抱き寄せた。映像は鮮明で、音声も完全で、紗奈が頭を下げた瞬間に睫毛が落とす細い影まで、一点の欠けもなく収めていた。

黒瀬さんの指が膝の上を二度、軽く叩いて止まった。それから暗号化チャンネルを開き、ファイルを一条様の個人端末へ送信した。

一行の文を添えて。「あなたの目の届かないところで、彼女がどん...

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