第七十三章 夜道・庇護

藤崎の刀が突き出された瞬間、紗奈の身体が頭より半拍早く動いた。

本能で身を斜めに後ろへ傾け、左腕を胸の前に横に出した。解剖刀の刃が斜めに掠めた——予測していた角度からずれて、前腕の内側を切り抜けていった。

鋭い痛みが電流のように手首から肩まで走り抜けた。

頭を下げると、白衣の袖口の木綿が急速に滲んでいくのが見えた。色が灰白から濃くなり、端がまだ広がっていた。

だが頭の中で異様に冷静な一つの考えが閃いた。スマートフォンの録音はまだ動いている。

叫ばなかった。

藤崎は空を刺して体の重心が前に傾き、一瞬バランスを失った。紗奈はその零点何秒かを掴み、スマートフォンを白衣のポケットの奥深...

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