第七十九章 これはあなたたちが手を出せる人間ではない

廃倉庫の中で、スマートフォンの接続音がやけに鋭く響いた。

電話の向こうが沈黙した。

短い間ではなかった。十数秒にわたる、倉庫の全員が落ち着かなくなるほどの死の静けさだった。

紗奈の心が一気に落ちた。

一条様が感情に引きずられる人間ではないことは、誰よりも自分が知っていた。彼のすべての決断は精密に計算される。今この沈黙は、彼が犯人の要求に応じるかどうかを判断する材料にならなかった。

表情を強いて平静に保ちながら、最悪の状況をすでに素早く頭の中で組み立て始めていた。


沈黙の後、電話の向こうからごく小さな、投げやりな鼻音が漏れた——些細な事務連絡を処理しているような音だった。

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