第八十五章 病室の静寂

医師が出ると、病室の扉が小さな音を立てて閉まった。

紗奈は枕に寄りかかり、顔が洗い晒した紙のように白かった。目を閉じず、ただわずかに睫毛を伏せたまま、視線を掛布団の皺の上に落として、ベッドの脇に座る人間を見なかった。

七年。七年の結婚生活の経験が、これから起きることに何も期待するなと告げていた。

彼が今こうして静かにここに座っていること自体が、言いようのない居心地の悪さを作った。

彼は何を待っているのか。


沈黙が約五分続いた。

一条様はスマートフォンを見なかった。ただ座り、肘を膝についで頭を下げ、床のどこかにある見えない点を見ているようだった。廊下からたまに看護師の台...

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