第10章 剣山

岩崎春菜は、果物籠を手に、やわらかな――けれど白々しい笑みを浮かべていた。

 わざわざ美玲に会いに来たのだ。

 ここまで堕ちた、哀れな女を見に。

「美玲、久しぶりね」

 美玲はゆっくりと目を上げた。瞳はうつろで、焦点も定まっていない。

 岩崎春菜の顔を、じっと長いこと見つめている。そうしてようやく、少しずつその顔を思い出した。

 岩崎春菜。

 けれど、その相手が自分とどういう関係だったのか、すぐにはわからない。

 頭の中は空っぽだった。ただ、かすかな違和感だけが残っている。

 その呆けたような、感情の抜け落ちた姿を見て、岩崎春菜は胸の内でほくそ笑んだ。

 わざと腰を落とし...

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