第102章 もう殴るな!

中村哲也の指先が、阿部岳斗に触れようとした――その刹那。

阿部岳斗は、いきなり逆手で中村哲也の手首を掴み取った。

「――っ!」

次の瞬間、長い脚が跳ね上がる。腹へ、容赦のない一撃。

鈍い衝撃音が廊下に弾け、中村哲也の身体は糸の切れた凧みたいに吹き飛んだ。背後の壁へ叩きつけられ、そのまま崩れ落ちる。

「ぐっ……!」

血を吐く音。壁を伝って滑り落ちる影。

銀色のUSBメモリが、床に転がった。

「中村哲也!」

美玲は見えない。けれど、血を吐く湿った音だけで十分だった。恐怖に引きつった叫びを上げ、手足をばたつかせて音の方へ這い寄ろうとする。

「押さえろ」

阿部岳斗は、倒れた男を...

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