第106章 彼女を死なせるな

「心配してるだけだよ」

岩崎春菜は阿部岳斗の胸に身を預けた。

床に転がっていた美玲が、壁を探りながら、少しずつ立ち上がる。見えていないはずなのに、その顔だけは執拗に岩崎春菜のいる方角へ向けられていた。

「……岩崎春菜」

美玲が唐突に名を呼ぶ。

岩崎春菜はびくりと肩をすくめ、阿部岳斗の背へ隠れるように身を寄せた。

「姉ちゃん……なんで、そんな目でこっち見てるの……」

美玲は答えない。ゆっくりと手を伸ばし、自分のズボンの腰の縫い目へ指先を滑らせた。

そこに隠してある。血の跡が残るプラチナブローチ。

美玲の口元が、ぞっとするほど冷たくつり上がる。さらに一歩、にじり寄った。

阿部...

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