第112章 死?

医師が壁の時計にちらりと目をやった。

「阿部さん。患者、阿部美玲さんは、本日20時45分、死亡を確認しました」

阿部岳斗は、その場に立ち尽くした。

――死?

脳が、いきなり電源を引き抜かれた機械みたいに止まる。

真っ白。

音もない。

映像もない。

次の瞬間、胃の奥から喉元へ、凄まじい痛みが突き上げてきた。

いくつもの返しのついた刃が、臓腑をえぐっているみたいに。

「ぶっ……」

阿部岳斗の口から、どろりとした血が噴き出した。

生温い血が、白いタイルの床に散る。

目を背けたくなるほど、鮮烈だった。

「阿部社長!」

秘書が悲鳴を上げて駆け寄る。

阿部岳斗の大柄な身体...

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