第114章 全部嘘だ

阿部岳斗はVIP病室のマジックミラーの前に立っていた。

ガラスの向こうには、分厚い包帯で全身をぐるぐる巻きにされた「患者」。

五分。

十分。

胃の奥がぐらりとひっくり返り、こみ上げる吐き気が喉元まで突き上げてくる。

偽物だ。

全部、偽物。

世界中は騙せても――自分だけは、騙せない。

阿部岳斗は踵を返すなり、廊下の金属製のゴミ箱を思いきり蹴り飛ばした。

「ガンッ!」

鈍い破裂音に、ボディーガードたちが肩を跳ねさせ、息を呑む。

魂を抜かれた幽鬼みたいに、阿部岳斗はよろめきながらエレベーターへ滑り込み、地下2階のボタンを叩いた。

霊安室。

重い金属扉を押し開けた瞬間、骨ま...

ログインして続きを読む