第117章 痛み

手術灯が眩しい。

救命救急室は、血の匂いで満ちていた。

医師がメスで阿部岳斗の気管を切開し、挿管チューブを差し込む。切り口からは、どろりとした赤があふれ出す。

看護師が吸引器を握り、ひたすら吸い上げた。

「血圧60/40! まだ下がってます!」

「アドレナリン、早く!」

執刀医が注射器を、阿部岳斗の心臓へ突き立てる。

一秒。

二秒。

三秒。

「心拍、戻った!」

モニターの緑の線が、一直線から、かすかな波へ変わった。

医師は息をつく。だが表情の硬さは解けない。

「頸部の毒がリンパ系に回ってる。透析の準備」

「肝機能の数値、限界に近いです」

「まずは生かす。ほかは目...

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