第118章 手首を切って自殺

集中治療室には、機械の規則正しい電子音だけが落ちていた。

阿部岳斗はベッドに横たわり、息を吸うたび、棘のついた鉄線を飲み込むような感覚に襲われる。

喉には太い管が差し込まれ、手術を終えたばかりの傷口を容赦なく擦っていた。

痛い。

それでも、眉ひとつ動かさない。

目を開けたまま天井を見つめ、脳裏に浮かぶのは――血にまみれた美玲の顔ばかりだった。

そのとき、病室のドアが乱暴に押し開けられる。

秘書が汗だくで飛び込んできた。ノックもない。

「阿部社長!」震えた声が空気を裂く。「三階で……事故です! 岩崎春菜がトイレで手首を切って、自殺を――!」

阿部岳斗の眼球が、わずかに動いた。...

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