第140章 致命的

いいえ。

いまの彼は、彼女の手の中に握られた一本の刃にすぎない。

阿部岳斗に、自分がいちばん大切にしてきた会社を自分の手で壊させる。高く掲げてきた肩書も、誇りも、地に落とさせる。そして――自分の罪を裏づける証拠を、両手で差し出させる。

狂えば狂うほど、執着すればするほど。

その刃は、いつか必ず持ち主を噛む。噛み返す瞬間が来たとき、致命傷になる。

防犯カメラの映像の中で、阿部岳斗は血のついた鉄パイプを放り捨てた。

最後のボディーガードは血だまりに沈み、悲鳴を上げる力すら残っていない。

阿部岳斗は荒い息を何度も吐き、黒いシャツは血でぐっしょりと染まっていた。自分で貫いた太腿を引きず...

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