第148章 悪魔

三日後。

ジュネーブ、私邸。

江口美玲は二階の大きな窓辺に腰を下ろし、赤ワインのグラスを指先で傾けていた。

窓の外、林の奥を――ひゅっと、黒い影がいくつも横切る。人目を避けるような、いやらしい動き。

上空には小型ドローンが二機。羽音を殺しながら旋回し、レンズは執拗に彼女の部屋へと向けられている。

ネット上では「江口美玲の偽装死」「財産詐取」「阿部グループ役員を残虐に虐殺」――そんな文言が、まるで病原菌みたいに拡散していた。

粗悪な合成写真と匿名の“暴露”が積み上げられ、彼女は極悪非道の悪魔に仕立て上げられる。

市川颯人が大股で部屋へ入ってきた。顔色は鉄のように硬い。

「阿部岳...

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