第159章 腐り落ちる

「その女は集中治療室へ。情報は遮断して。私が直接行くわ」

江口美玲はそう言い捨てると、通話を切った。

机上の別の赤いボタンを押す。壁一面の大型スクリーンがぱっと点灯し、ベルマーシュ刑務所の内部監視カメラへ直結した。

映像は地下3階、重罪犯区画へ切り替わる。

薄暗く湿った一角。鼻を突く排泄物の臭いに、鉄錆じみた血の匂いが混じっている。

阿部岳斗が、下半身のない蛆のように、汚れたコンクリートへ這いつくばっていた。腹部の潰れた傷はまだ塞がらず、巻かれたガーゼには黄緑色の膿と血が滲んでいる。

それでも彼は、腐り落ちた顔を持ち上げていた。

口に含んでいるのは、見る影もない男のそれ。

目...

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