第16章 身の程知らずめ

ダメ。

  食べられるわけがない。

  それは、彼女の子だった。

  自分の身体から落ちた肉片だった。

  極限の恐怖と、生理的な吐き気がいっぺんに押し寄せ、血が逆流するような感覚に全身が粟立つ。

  彼女は奥歯を噛みしめた。阿部岳斗の指が顎の骨を砕きそうなほど食い込んでも、唇だけは死んでも開かなかった。

「んっ……んんっ……!」

  必死に首を振る。涙は頬の血と混ざり、大粒になって阿部岳斗の手の甲へ落ちた。

  薬液が口角から流れ込み、舌に触れた瞬間、苦さと腐臭が広がる。死の匂い。

  胃が狂ったように痙攣し、酸が喉までせり上がった。

「阿部岳斗……」

  抵抗を捨て...

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