第169章 生き残った

「すぐに、あいつの独房へ。今すぐ」

「了解。直ちに」

スピーカー越しに、重い軍靴が階段を踏み鳴らす音が響いた。続いて、分厚い鉄扉が乱暴に押し開けられ、耳障りな金属音が響き渡る。

一瞬――画面越しですら、吐き気を催すほどの静寂が伝わってきた。

次いで、壊れかけのふいごみたいな、かすかな嗚咽。

「……ゔ、……ぐる……」

阿部岳斗だ。

声にならない。床の上で、死にかけの野犬みたいに痙攣しているだけ。

その音を聞きながら、江口美玲はひび割れた唇の端を、ゆっくりと吊り上げた。

「阿部岳斗」

スマホに向かってそう告げた瞬間、向こうの嗚咽が、喉でぷつりと途切れた。死んだような沈黙。

...

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