第19章 彼女を噛み殺せ

阿部岳斗は踵を返すと、岩崎春菜の肩を抱いたまま、振り返りもせず廊下の奥へ消えていった。

革靴が床板を叩く音が、だんだん遠のいていく。

地下室。

美玲は水の溜まった床にうつ伏せになり、ちいさなガラス窓越しに、その男の背中が完全に消えるまで見送った。

瞳に残っていた最後の光も、背中といっしょに――すうっと、消えた。

もう、やめた。

両手は振り回されなくなり、身体も抵抗をやめる。

……好きにすればいい。

この獣どもに噛み殺されればいい。食い尽くされて、骨一本残らなければいい。

冷たい蛇が、何匹も何匹も、彼女の身体へ這い上がってくる。

口が開き、鋭い牙が皮膚と肉に食い込んだ。

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