第38章 唯一の価値

アレンは手足の先まで冷え切っていた。

目の前には、スーツ姿の男。阿部岳斗が、まるで物体でも見るように彼を見下ろしている。

アレンは悟った。

この男は医学など信じていない。人の命にも興味がない。

阿部岳斗が欲しいのは、ただ結果だけだ。

「阿部さん……」

唇を震わせた瞬間、膝が崩れた。床に散った強心剤の液へ、そのまま尻もちをつく。

医者であるという肩書きは、阿部岳斗の前では何の盾にもならなかった。

「外へ出せ。隣の休憩室に閉じ込めろ」

阿部岳斗は視線を切り、ポケットからハンカチを取り出す。先ほどアレンに触れた指先を、丹念に拭った。

「俺の許可があるまで、トイレだろうが一歩も部...

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