第52章 また芝居をしている

隣の壁一枚を隔てた監視室。

阿部岳斗は黒い革張りのソファにだらしなく身を預け、脚を組んでいた。手には氷を落としたウイスキー。壁一面の大型モニターが、地下室で起きているすべてを鮮明に映し出している。

画面の中で、美玲は鋭いガラス片を自分の喉元に押し当てていた。

白い肌を伝って血が流れ、裸の身体を赤く染めていく。

阿部岳斗は冷たい唇の端を吊り上げ、残酷な嘲笑を刻んだ。

「また芝居か」

顎を上げて、冷えたウイスキーをひと口。瞳には軽蔑と嫌悪が濃く滲む。

この卑しい女は、自分の注意を引くためならどれだけ極端な真似でもする。

今さら何を「まともな女」ぶっている。

さっき床に押さえつけ...

ログインして続きを読む