第65章 俺をからかう気か!

阿部岳斗は、脇にあった医療用カートを足で蹴り倒した。

重たい金属機器が壁に叩きつけられ、耳を裂くような轟音が廊下まで響く。部品と薬瓶が砕け散り、床一面に転がった。

「俺をナメてんのか!」

殺気をまとったまま、阿部岳斗は集中治療室を飛び出した。

廊下では、中村哲也が新しい診療報告書を手に、足早にこちらへ向かってくるところだった。阿部岳斗の荒れた気配を見て、中村は眉をひそめる。

「また何を暴れてる。春菜がさっきナースステーションに電話してきた。お前、まだ養子縁組の手続きに――」

「黙れ!」

阿部岳斗は中村の白衣の襟をつかみ、冷たい壁へ乱暴に押しつけた。

「目黒律が逃げた」

真っ...

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