第83章 貼り付けたい?

中村哲也は視線を引き戻し、眉をつり上げた。

「何だよ。ちょっと見るくらい、ダメなのか?」

阿部岳斗は鼻で笑っただけで、答えない。

そのまま踵を返し、大股で一本の大樹の下へ向かった。

「美玲。ほんと、性根って変わらねえな。目が見えなくなっても、男をたぶらかすやり方だけは知ってるってか?」

美玲は、どこを向けばいいのかも分からないまま、ぼんやりと彼の気配に顔を上げた。

「……何のことか、分かりません」

「分かんねえ?」

次の瞬間、阿部岳斗が足を振り上げる。革靴の底が、美玲の芝生に置かれた手の甲へ容赦なく落ちた。

「っ……!」

美玲は息を呑む。だが、裂けた唇を噛みしめ、声だけは...

ログインして続きを読む