第85章 一緒に死ぬ!

足元に口を開けた深淵を見下ろした瞬間、岩崎春菜の顔から血の気が引いた。水音を裂くような悲鳴が迸る。

「麻耶! 引きはがして! 早く!」

傍らの高城麻耶は、すでに腰が抜けていた。せいぜい一、二発蹴って憂さ晴らしする程度のつもりだったのだ。命が絡む真似に首を突っ込めるはずもない。脚は震え、前へ出ることすらできない。

そのとき――ずっと後ろに隠れていた阿部陽が、ふいに動いた。

三歳の子どもは言葉にできなくても、何が「だめ」かはわかる。

追い詰められた子狼みたいに飛びかかり、岩崎春菜のふくらはぎに噛みついた。歯が食い込み、離れない。

「――っ、雑種! 離しなさいよ!」

岩崎春菜は痛みに...

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