第95章 心なき化け物

別荘の二階、寝室。

岩崎春菜は薄手の白いシルクのパジャマ姿で、裸足のまま分厚い絨毯を踏んでいた。

髪は乱れ、目元は赤く腫れている。今にも萎れてしまいそうな白薔薇みたいに、脆く見えた。

阿部岳斗は風呂を上がったばかりで、腰に巻いているのはバスタオル一枚だけ。水滴が鍛えられた胸板を伝い、腹へと落ちていく。

「岳斗……」

春菜は背後へ回り込み、その背中にぎゅっと抱きついた。頬を冷たい背に押し当てた瞬間、涙が肌を濡らす。

「どうしてまだ起きてる」

岳斗が振り向く。疲れ切った顔を見て、眉がわずかに寄った。

「目を閉じると、陽が落ちていくところばっかり……」

春菜は震えながら泣き、岳斗...

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