第96章 楽しんでいるんじゃないか?

彼女は汚水の中に硬直したまま膝をついていた。肩口の布は裂け、皮膚が裂けて肉がめくれた鞭の痕がむき出しになっている。

「ア……阿部社長……」

さっきまで威張り散らしていた酔っぱらいは、顔面蒼白で酒が一気に抜けたようだった。膝が笑い、声も震える。

「あなたの女だなんて、知らなくて……」

「消えろ」

阿部岳斗は一瞥すらくれない。

酔っぱらいは転げるようにトイレを飛び出していった。

残ったのは、二人きり。

阿部岳斗の指が美玲の顎を容赦なく掴む。骨が砕けそうなほどの力で。

「清いフリしてたんじゃないのか?」

吐き捨てる声には、濃い嫌悪が滲んでいた。

「さっきは気持ちよさそうだった...

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