第10章

退勤間際、四宮礼司から電話が入った。相沢愛音を迎えに来て、一緒に帰るという。

指定された場所で数分待つと、黒いマイバッハがゆっくりと滑り込んできて、彼女の前で止まった。

後部座席の窓が下がり、気品のある整った四宮礼司の顔がのぞく。

「乗れ」

相沢愛音は手に抱えた箱を胸元に寄せたまま車に乗り込み、男のほうへ向き直って挨拶をした。

「こんにちは、四宮様」

その呼び方に、礼司はわずかに眉をひそめたが、何も言わない。

「おじい様に会う前に、私……身だしなみ整えたほうがいい?」

迷った末、相沢愛音はそう尋ねた。

「必要ない。今のままで十分だ。あとで人も増えるし、そんなに緊張しなくてい...

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