第29章

相沢愛音が帰宅したとき、顔には露骨な苛立ちが張りついていた。ソファにどさりと腰を落とし、眉間にぎゅっと皺を寄せる。

二階から、四宮壱に車椅子を押されて四宮礼司が降りてくる。

「久遠成安に会ってきたのか」

「なんで知ってるの?」相沢愛音は目を見開いた。

四宮礼司の瞳が、すっと暗くなる。その瞬間にはもう、相沢愛音は語り出していた。どうやって久遠成安に待ち伏せされ、吐き気がするような戯言を聞かされたのかを。

しゃべり続けて喉がからからになったころ、四宮礼司が気の利いたことに水の入ったグラスを差し出してくる。眉間の緊張もほどけ、どこか機嫌がよさそうだった。

相沢愛音は受け取って一気に飲み...

ログインして続きを読む