第31章

久遠成安の顔色が明らかに悪いのを見て、相沢衣奈の胸がひゅっと跳ねた。慌てて近づき、彼の腕をつかんでゆさゆさと揺らす。

「成安兄さん、違うの。言いたかったのは――この件、ほんとに兄さんのおかげってこと。私のためにこんなに動いてくれて……ちゃんと覚えてるから」

この人はまだ使える。

追い詰めて逆上させるわけにはいかない。

相沢衣奈はみじめそうな顔を作り、声もわざと弱く、泣きそうに震えさせた。すると久遠成安の胸に芽生えかけていた疑念は、ふっと霧のように消える。

「衣奈、泣くな。お前のためなら何だってする。さっきは……ちょっと腹が立っただけだ」

久遠成安は彼女を抱き寄せ、顎を相沢衣奈の頭...

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