第33章

「野村翔?」

 雪村心春はきょとんと目を瞬かせ、記憶をたぐるように少し考え込んだ。だが、どうにも思い当たる節がない。

「その人、私知らない。愛音、どうしてその人を探してるの?」

 もともと、だめでもともとで聞いてみただけだ。しかも何年も前の話で、相沢愛音自身ですら記憶はもうおぼろげになっている。だから雪村心春の答えにも、特に驚きはしなかった。

 愛音は首を横に振った。

「ううん、別に。ただ聞いてみただけ」

 雪村心春は、愛音が何かを抱えているのだと直感した。でなければ、今日になって急に病院へ人を捜しに行ったりはしないはずだ。

 けれど、本人が話さない以上、雪村心春も深く追及する...

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