第36章

世間じゃ、四宮礼司は妻と不仲だなんて噂されていたはずだ。

けれど今日の様子を見るかぎり、そんなふうにはまるで見えない。

社員たちが陰で交わしていたひそひそ話も、相沢愛音の耳にはひと言も入らなかった。

四宮礼司から電話でオフィスの階を聞かされ、相沢愛音はエレベーターで上がっていく。途中で彼女を見かけた者たちは、みな好奇の色を隠せない目を向けてきた。

とりわけ彼女が社長室へ入っていくのを見たあとでは、ざわめきはいっそう大きくなる。

やがて少し前の結婚式を思い出し、彼女が相沢愛音だと気づく者も現れた。

社長室に入ると、相沢愛音は途中で買ってきた軽食を机の上に置いた。

「きっとお昼、ま...

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