第45章

「……いや」

四宮礼司の声が、少し間を置いて部屋に落ちた。車椅子の肘掛けを握る指に、じわりと力がこもる。

マッサージをするため、相沢愛音は今、彼のすぐそばにいた。

垂れた長い髪が時折、彼の太ももをくすぐる。ほのかな香りまでまとわりついてきて、礼司は内心、ひどく煩わされていた。

この頼みを受けるべきじゃなかった。苦しいのは自分のほうだ。

その一方で愛音は、手を動かしながら彼の表情を細かく窺っている。

礼司が目を開けると、ちょうど彼女の視線とぶつかった。

「俺の顔に何かついてるか?」

覗き見がばれたと気づいた愛音は、慌てて視線を逸らし、何でもないふうを装う。

「な、何も……...

ログインして続きを読む