第53章

「あなたの足――?」

 相沢愛音は思わず口にした。昨夜、この人は立ち上がっていた。

 見間違いなんかじゃない。あれは絶対に幻覚なんかではなかった。

 車椅子に腰掛けた四宮礼司は、髪を拭きながら気だるげに視線を寄越す。

「ん? どうした」

 あまりにも平然としている。まるで昨夜など何事もなかったかのような態度に、相沢愛音は一瞬、自分の記憶のほうを疑いかけた。

 すっと目を細めたあと、彼女は何かを決めたようにベッドを降り、四宮礼司の前まで歩み寄る。

 そして身をかがめると、そのまま彼の太ももに手を伸ばし、ぎゅっと力を込めてつねった。

「っ……!」

 男が低く息を呑む。

 四宮...

ログインして続きを読む