第58章

 道路の向こうから、黒い小型車が制御を失ったみたいに、こちらへ突っ込んでくるのが見えた。

 相沢愛音の叫びに、雪村心春は慌ててハンドルを切る。

 キィィ——!

 車体は路上でS字を描き、タイヤがアスファルトをえぐって耳を裂くような摩擦音を上げた。

「心春、危ない!」

 ギリギリで暴走車をかわした直後、相沢愛音がもう一度叫ぶ。

 ガンッ——と衝撃。黒い車がこちらの車のテールをかすめ、勢いのままフロントが路肩のガードレールへ突っ込んだ。

 胸を締めつけられるような痛みが走り、相沢愛音の視界がすっと暗くなる。

 そのまま、意識が途切れた。

 ……

 目を覚ましたとき、相沢愛音の...

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