第8章

四宮壱の忠告なんて、相沢愛音はまるで気にしていなかった。

いぬ――たかが犬だ。何が怖いっていうの。

だがその考えは、裏庭に着いて、地面に腹ばいになって日向ぼっこしているワニを見た瞬間、派手に砕け散った。

四宮礼司は「いぬ」に何か誤解でもあるのか。こいつら、そもそも分類からして違うでしょうが。

しばし沈黙したあと、愛音はガラスの囲いの中のそれを指さし、振り向いた。

「……これが、いぬ?」

「若様が付けた名前でございます。若奥様、先ほども申し上げました」

相沢愛音のこめかみがぴくりと引きつる。センス、独特すぎる。

その瞬間、ワニが新しい獲物を見つけたみたいに、一直線にこちらへ突進...

ログインして続きを読む