第10章

「佐島先生……兄は、私が受からなかったら家の恥になると思っているだけなんです。だから、こうしませんか。親友の名義で枠を一つだけ取らせてください

もし私が通ったら、そのとき一度だけチャンスをください。落ちたら……今の話はなかったことにします。お願いできますか」

古川朱那は一瞬だけ逡巡し、すぐに言葉を継ぎ足して自分を守った。

佐島明は頷いた。

古川朱那はようやく、長く息を吐く。

今は動くな。勝負は明日だ。

翌朝、古川朱那は夜明け前に起きて、須藤若菜の手を引き、オーディション会場へ向かった。

受験者は多い。彼女の順番は5番目。

「朱那、いける! 頑張れ!」

須藤若菜が両手を上げて...

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