第112章

一時、古川家は文字どおりのパニックに陥った。

けれどそんな中でも、古川朱那だけは相変わらず、自分のペースで淡々と日々を回していた。

最近は新入社員を何人も採用したうえに、『侠女無双』の仕上げ作業にも付きっきりだ。少しでも完成度を上げたくて、毎日足が地につかないほど忙しい。

古川家からの電話は鳴りっぱなしだったが、朱那は一本も取らなかった。――向こうが堪え切れなくなって、直接ここへ押しかけてくる日を待っていたのだ。

条件は、もう決めてある。

夜。仕事が片付いたのは23時を回ってからだった。

朱那はスマホを手に取り、また佐野一玄の番号へ発信する。

しかし受話口に返ってきたのは、冷え...

ログインして続きを読む