第167章

入ってきたのは、宮崎大奥様でもなければ、宮崎家の年長者たちでもなかった。

現れたのは宮崎家の執事ひとり。マイクを手に、舞台の中央へと歩み出る。

周防天華の胸に、たったいま灯った希望は、次の瞬間にはぽきりと折れた。彼女は執事の、冷たく厳めしい顔をまっすぐ見つめたまま――心の奥の最後の糸が切れていくのを感じる。

執事は宮崎元康に目もくれず、人垣の中心に立つと、その場で告げた。

「ご来賓の皆様、大変申し訳ございません。大奥様が急に体調を崩されましたため、本日の婚約式は中止とさせていただきます。ご臨席、誠にありがとうございました。お帰りの車はこちらで手配いたしますので、順次ご案内いたします」...

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