第169章

古川朱那の向かいには、宮崎大奥様がもうずいぶん前から座っていたらしい。

深紫の着物を纏い、気品と威厳がそのまま形になったような佇まいだ。

並べてみれば、古川朱那が小狐なら――大奥様は妖力を宿した千年の狐。

侍者がハンドドリップのコーヒーを二杯運び、気配を殺したまま退いた。

宮崎大奥様は前置きなく、古川朱那の顔を正面から射抜く。

「古川嬢。昨日のUSB、あなたが寄越したものでしょう」

朱那はカップを持ち上げ、ふう、と湯気を払う。否定もしない――それが答えだった。

大奥様はその反応を確かめるように目を細め、続ける。

「けれど不思議なのよ。あなたと古川家、特に周防天華とは、どれほど...

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