第170章

去っていく彼女の背中を見送りながら、周防天華の視線はじわじわと陰り、底知れない凶気を帯びていった。

古川朱那……古川朱那。

あたしが、あんたをいつまでも好き勝手させると思ってるの?

「ワイヤー、準備できてんのか? もう一回チェックしろよ」

少し離れたところから、長島ケンの苛立った催促が飛ぶ。

その声を聞いた瞬間、周防天華の瞳がかすかに光った。

今日は古川朱那が、吊りの大シーンを撮る日だ。四、五階相当の高さから、勢いよく降下する。

もし、ほんの少しでも手元が狂って――「バン」と、ワイヤーに不具合が出たら……。

古川朱那ってクズ、派手に醜態を晒すことになるじゃない。

想像を転が...

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