第171章

医師の眉が、ほんのわずかに寄った。鋭い視線が古川家の面々を切り裂く。

この病院で長年やってきた。魑魅魍魎なら嫌というほど見てきた。

――こいつら、助ける気がない。

それが、手に取るように分かった。

「どんな手術にもリスクはあります。こちらも全力は尽くします」

医師の声は落ち着いている。

「ですが、時間がありません。ご家族は至急、署名を」

手術同意書を、古川礼和へ差し出した。

古川礼和は指先を震わせながら、ゆっくり受け取る。

危篤通知に並ぶ、目に痛い黒い文字。

視線の端で、二人の弟の――期待に濡れた目が見えた。その瞬間、すべて腑に落ちた。

こいつらは、古川朱那に死んでほし...

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