第172章

佐野一玄は一歩踏み出し、目の前の「身内」二人へとじり、と迫った。

血のように赤い瞳の奥で、ぞっとする冷気が渦を巻く。

「相手が誰だろうと、俺は絶対に逃がさない」

「……あなた……」

音無柔は反射的に一歩退き、信じられないものを見るように息子を見つめた。

見慣れたはずの顔が、今はどこか別人に見える。――まるで、今日初めて本当の息子を知ったみたいに。

佐野爺さんも、その言葉に顔色を失い、鉄のように青ざめた。

佐野一玄を睨み据える眼差しには、隠しようのない落胆が沈んでいる。

「一玄……自分が何を言っているのか、分かっているのか」

「分かってる」

佐野一玄はその視線を受け止め、ひ...

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