第174章

「さっき、動いたんだ! 俺、見たんだぞ!」

佐野一玄は興奮で顔を紅潮させ、声まで震えていた。

「先生を呼べ! 早く、医者だ!」

主治医はすぐに駆けつけた。まず佐野一玄を落ち着かせようとしたが、鋭い一瞥に射抜かれ、慌てて古川朱那のもとへ向かう。

医師は瞳孔反射を確認し、四肢を丁寧に触診した。とくに――手。

その指先を、慎重に、何度も。

この瞬間、時間だけが引き伸ばされていく。

須藤若菜も息を止め、医師の動きを食い入るように見つめた。

やがて主治医が上体を起こし、小さく頷く。

「佐野さん。いま見えた“手の動き”は、回復がゆっくり進んでいる証拠です。覚醒の兆しがあります」

その...

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