第178章

病室では、古川朱那がベッドの背にもたれ、佐野一玄が口元へ運ぶぬるい水を、ちびちびと飲んでいた。

「外……なんだか騒がしくない?」

かすかな物音に気づき、朱那は一玄を見上げる。

佐野一玄はコップを置くと、ティッシュで彼女の口元をそっと拭いた。

「大したことじゃない。関係ない連中なら、もう帰った」

「関係ない……?」

その言い方に混じった冷たさを拾ってしまい、朱那の胸の奥に小さな引っかかりが残る。

一玄も隠しきれないと悟ったのだろう。少し黙ってから、静かに言った。

「古川朱那。おまえは記憶を失ってる。覚えてないことが、たぶんたくさんある」

そこで言葉を切り、彼は真正面から彼女を...

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