第46章

おかしい。

以前なら、古川朱那はほんの少しでも理不尽を味わえば、必ず不満を口にした。なのに今は――まるで感情が抜け落ちたみたいに、何の波もない。

……吹っ切れたのか。天華と張り合うのは無駄だ、と。

「お姉ちゃん、大丈夫? ごめんね……さっきは急だったし、お兄ちゃんも、きっと気が回らなかっただけだよ……」

周防天華が小さく声をかけてきた。

視線は、シートに縮こまる朱那へ。両手をぎゅっと握り、肩がかすかに震えているのを見つけると、天華の胸の内は甘く弾む。

――ほら。平気なふりしてるだけ。

このクズはいつもそうだ。強がって、口だけは達者で、みっともなさをごまかそうとする。

でも、ど...

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