第51章

周防天華は声を落とし、二人にしか聞こえない音量で付け加えた。

「あなたが事前にどんな手を使ったのかは知らないけど、マイルズ夫人に気に入られたみたいね。でも叔父さまから言われたの。ほかの人に恥をかかせるような真似はするな、って」

――は? 何それ。頭おかしいんじゃないの。

古川朱那は、彼女に視線すらくれてやる気にならなかった。くるりと踵を返し、そのまま個室へ戻る。

中に入って、朱那は足を止めた。

空いている席は、マイルズ夫人の隣にひとつだけ。夫人がにこやかに手招きして、こちらに座れと言っている。

本来なら、貴客の隣に座るのは古川邦夫と古川礼和のはずだ。なのに古川礼和はひとつずらされ...

ログインして続きを読む