第80章

そう言い終えると、彼女は監督のほうへ向き直り、軽く頷いた。

「監督、今のテイク、感情は乗りました。使えると思います

もしダメなら、もう一回いきます」

「OK! ひとまず休憩。メイク直して!」佐島明が手を振る。

古川朱那はそのまま休憩スペースへ歩いていった。

泣きじゃくる周防天華を抱えた古川礼人だけが、その場に取り残される。顔色は青ざめたり赤くなったりで、まるで笑いものだった。

少し離れたところで、ちょうど自分の出番を終えた佐野鶴が、その一部始終を見ていた。

彼は古川朱那の横へ寄り、水のボトルを差し出す。好奇心と、からかうような色が混じった口調で言った。

「古川家って……人間関...

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