第90章

なぜ?

昨日はあれほど叱りつけておいて、今日は古川朱那のその顔には、この甘さ。

……結局、いまの朱那に「価値」があるからだろうか。

古川朱那は集まる視線を余すところなく受け止め、胸の内で乾いた笑いをこぼした。

古川家の連中は、彼女を大事にしているわけじゃない。

利用できると見たから、関係修復の「絵」を作っているだけ。外向けの体裁を整えるために。

でも、朱那はそれをわざわざ暴く気はなかった。

現場では、表面上の平穏を保っておくほうが自分にとって得だ。

「ありがとうございます」

古川朱那の声は淡々としていた。

アシスタントから差し出された搾りたてのフルーツジュースを受け取り、...

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